経理
月次決算を早く締める。仕訳の発生源ごとに手入力を消していく順序
月初に通帳と紙の明細を並べて、会計ソフトに仕訳を打ち込んでいく。先月の数字が固まるのは月の後半、ひどい月は翌月にずれ込む。経営者に聞かれても「まだ締まっていません」としか答えられない。月2,000仕訳の想定で発生源ごとに内訳を出すと、どこを自動化すれば何時間消えるかがそのまま読めるようになります。その内訳の作り方と、設定で消える範囲・前処理の開発で繋ぐ範囲の分け方を書きます。
バックオフィス自動化エンジニア
仕訳の手入力が月次決算を止めている
月次決算が遅い会社の内訳を見ると、原因はたいてい判断ではなく入力です。銀行口座、クレジットカード、現金売上、経費。お金の動きを人が1件ずつ仕訳にしているため、締め作業が「全員で入力する月初の数日」になります。
入力が終わらないと数字が出ず、数字が出ないと打ち手が遅れる。月次決算の遅れは経理の残業問題であると同時に、経営判断が常に1か月遅れる問題です。
3店舗50名、月2,000仕訳の会社の内訳
従業員50名で店舗が3つの会社です。仕訳の発生源は、銀行明細600件、カード明細300件、経費精算300件、店舗売上(POSレジ)500件、現金その他300件で、月2,000件とします。手入力が1件1分なら 2,000件 × 1分 = 2,000分で、月33時間。経理2名が月初の数日、入力に張り付く量です。
クラウド会計の自動連携で取れるのは、銀行・カード・経費の計1,200件。全体の6割にあたるこの入力は、契約と設定、学習ルールの整備で消えます。POSの500件は連携の外にあるため、日別・店舗別に集計して会計の取込形式に変換する前処理を開発でつなぎます。ここまでで全体の8割5分です。
残るのは現金その他の300件で、1件1分なら月5時間。月33時間の入力が5時間になる計算です。発生源ごとに件数を並べると、どこを自動化すると何時間消えるかがこの形でそのまま読めます。
御社でも同じ表が作れます。発生源ごとの月間仕訳件数に、1件あたりの入力時間を掛けるだけです。この一覧はそのまま相談の資料になり、開発会社や会計ソフトのサポートに見せれば、初回の打ち合わせで金額の見当まで話が進みます。
作る側の視点。設定で消える源と、前処理の開発で繋ぐ源
発生源は2つに分けます。クラウド会計の自動連携で取れる源(銀行、カード、対応する請求書・経費サービス)と、取れない源(POSレジ、業界固有システム、Excelの売上台帳、現金)です。前者は設定の問題、後者が開発の問題になります。
クラウド会計の標準機能で足りるのは、銀行・カード明細の自動取得、過去の仕訳からの学習による科目の自動提案、請求書・経費・支払の各サービスからの仕訳連携です。ここまでは契約と設定と、学習ルールを育てる数か月の運用で到達できます。
個別開発が要るのは、自動連携で取れない発生源を繋ぐ前処理です。典型はPOSレジや業界システムの売上データで、日別・店舗別に集計して部門付きの仕訳に変換し、会計ソフトの取込形式(CSVまたはAPI)に落とす処理を作ります。現金売上とレジ記録の突合、連携に対応していない金融機関の明細の整形も同じ枠です。
この前処理は「会計ソフトの外にあるデータを、会計が読める形に揃える」という一点に尽きる仕事で、大きなシステムは要りません。マネーフォワードやfreeeとの連携開発、AI-OCRを使った記帳SaaSの開発で、当方が繰り返し作ってきた部分です。科目や店舗の対応ルールはプログラムの外に設定として持たせ、店舗が増えたら設定を1行足すだけの形にしておくと、増えるたびに開発を頼む必要がなくなります。
つまずきやすいのは、連携できない口座や現金の扱いを後回しにすることです。大半が自動になっても、残った手入力が締め日を決めます。発生源の一覧を作った時点で、全部の源に「自動連携・前処理開発・手入力のまま」のどれかを割り当ててください。仕訳ルールの整備も最初の1〜2か月に集中的にやりきるかどうかで、その後の自動化率が変わります。自動提案は過去の仕訳から学習するので、導入直後は精度が出ません。
過去分の移行にこだわって始められないのも定番です。月次決算の目的なら、期首または直近月からの切り替えで十分なことが多いです。あわせて、何営業日までにどの数字が出たら締めたことにするのか、締めの定義も決めてください。ゴールがないまま自動化だけ進めると、「なんとなくまだ締まっていない」状態が続きます。
発生源の一覧を作れば、順番は決まる
順序は次のとおりです。(1) 仕訳の発生源と件数を一覧にする。(2) クラウド会計の自動連携で消える割合を確認する。未導入なら、この一覧を持って移行を検討する。(3) 残った発生源のうち件数の多いものから、前処理を開発する。
費用は、POSや台帳データの変換・取込のような前処理1本で、当方の目安で30万円台からです。発生源が複数ある場合も、一度に作らず件数の多い順に1本ずつ足していけば、効果を確かめながら進められます。
回収の計算です。先のシナリオでは月33時間が5時間になり、差は月28時間。時給3,000円換算で年約100万円です(28時間 × 3,000円 × 12か月 = 100万8,000円)。月次が早く締まるとは、翌月の頭に前月の店舗別・部門別の数字が揃うということでもあります。数字を待たずに手を打てるようになる価値は、経理の時間削減より大きいはずです。
「月次を早くする」は、仕訳の発生源ごとに「自動で取れるか」を潰していく作業です。ソフトの機能比較より先に、自社の発生源一覧を作ってください。見積りにもそのまま使えます。
