費用
業務システム開発の費用相場は、なぜ10万円から1,000万円以上まで幅があるのか
「業務システム 開発 費用」で検索すると、どのサイトも幅の広いレンジを出してきます。100万円〜1,500万円、300万円〜3,000万円。読んでも自社がどこに入るのか分かりません。この記事は、見積りを出す側の立場から、その幅が何でできているかを説明するものです。
バックオフィス自動化エンジニア
なぜレンジがこれほど広いのか
業務システムという言葉が、まったく違うものを同じ名前で呼んでいるからです。Excelの集計を自動化するツールも、部署をまたいで数十人が毎日使う販売管理システムも、どちらも業務システムと呼ばれます。前者は10万円台、後者は1,000万円を超えることがあります。同じ言葉で検索している人が、まったく違うものを探している状態です。
もう1つの理由は、見積りを出す側が幅を狭められないことにあります。話を聞く前の段階で金額を絞ると、実際より高い会社は問い合わせを失い、安い会社は受けたあとで足が出ます。だから広いレンジを出して、詳細は問い合わせてくださいと書く。読み手にとって役に立たない情報が並ぶのは、そういう構造があるためです。
この記事では逆に、金額を決めている要素のほうを書きます。自社の状況に当てはめれば、おおよそどのあたりかは判断できます。
規模による3つの帯
まず大まかな見当をつけるために、3つの帯に分けます。金額は当方の実際の見積り水準です。会社によって前後しますが、桁の感覚は大きく変わりません。
| 規模 | 費用の目安 | どういうものか |
|---|---|---|
| ひとつの作業を自動化する | 10万円〜50万円 | Excelの集計、決まった形式のファイル出力、通知の自動化。人が使う画面を作らず、既存のファイルやスプレッドシートをそのまま入力口にする |
| ひとつの業務をシステムにする | 50万円〜300万円 | 申請と承認、台帳の管理、帳票の出力。人が操作する画面があり、権限の区別が要る。数人から数十人が使う |
| 複数の業務をまたぐ | 300万円〜1,000万円以上 | 販売管理と会計、勤怠と給与のように、複数の業務が繋がる。既存システムとの連携やデータ移行を伴う |
「システムを作りたい」と考えている多くの会社は、実際には1段目か2段目です。3段目だと思っていたものが、話を聞くと1段目で足りることは珍しくありません。
同じ依頼でも金額が10倍違う理由
同じ「請求書の処理を自動化したい」でも、20万円で終わることもあれば200万円かかることもあります。差を作っているのは、扱うデータの種類の数、繋ぐ相手にAPIがあるか、例外の数、使う人数、止まったときの影響です。
このうち金額に最も効くのは、データの種類と例外の数です。請求書だけを扱うのか、請求書と入金と契約を突き合わせるのか。「この取引先だけ形式が違う」が10件あれば、10通りの処理を書くことになります。この2つは見積りを取る前に自社で数えられるので、数えてから相談すると、初回の見積りがそのまま使える精度になります。
それぞれの要素が金額にどう効くかは、費用ページの「金額を左右する要素」に書いています。
見積書の中身は「日数 × 単価」でできている
どの会社の見積りも、突き詰めると「かかる日数 × 単価」です。単価は1人日あたり5万円から10万円程度が一つの目安で、当方は6万円から8万円です。会社の規模や担当者の経験によって変わり、大手ほど高く、個人や小規模ほど低くなりますが、安ければよいという話ではありません。日数の見積りが甘ければ、後から追加費用が発生します。
見積書を受け取ったら、金額の合計より内訳を見てください。何の作業に何日かかる想定なのかが書かれていれば、妥当かどうかを自分で判断できます。書かれていない場合は聞いてください。答えられない相手は、根拠なく金額を出しています。
日数の配分にも目安があります。当方の見積りでは、実装は全体の35〜50%です。残りは、現在の手順を見せてもらって要件を整理する時間、設計、例外のケースを含めたテスト、現場が自分で扱えるようにする手順書の作成に使います。工程ごとの割合は費用ページの「お見積りの内訳」に載せています。
実装の割合が極端に高い見積りには注意してください。業務を理解する時間と、現場で使えるようにする時間が抜けている可能性があります。動くけれど使われないものは、そこから生まれます。
値引きを求めるより、範囲を調整する
予算が決まっている場合、値引きを求めるより範囲を調整するほうが確実です。値引きは日数の見積りを削るだけで、削った分は後から追加費用として戻ってきます。範囲の調整は、開発量そのものを減らします。
効くのは、いちばん時間を食っている作業から分けて発注すること、「この取引先だけ形式が違う」を業務側で揃えること、人が操作する画面を作らずに既存のExcelを入力口のまま使うこと、資料の残っていない既存システムが絡むなら調査だけを先に切り出すことです。どれも、開発側に「ここを減らしたい」と伝えれば具体的な答えが返ってくるはずです。
それぞれの中身は、費用ページの「費用を抑える方法」に書いています。
見積りを取る前に用意しておくとよいもの
いま使っているファイルや画面を、そのまま見せてください。整えた資料は整えた人の解釈が混ざるので、生のほうが正確に見積もれます。
用意していただきたいのは次の3つだけです。これがあると、初回の相談で金額の見当までお伝えできます。
- いま実際に使っているファイルや画面 — きれいにしないまま見せてください
- その作業に月何時間かかっているか — 正確でなくて構いません。「だいたい半日×週2回」で十分です
- 使える予算の上限 — 上限を先に言うと足元を見られると思われがちですが、逆です。上限が分かれば、その範囲でできることを設計できます
相場より、自社の時間で考える
最後に、金額の判断のしかたについて書きます。相場と比べるより、その作業に自社が使っている時間で考えるほうが確実です。
月20時間かかっている作業があるとします。担当者の人件費を時給3,000円とすると、年間で72万円です。これを30万円で自動化できるなら、半年で回収できます。逆に、月1時間の作業に50万円かけるのは、どれだけ相場より安くても割に合いません。
相場の記事を読んで「高い」「安い」を判断する前に、その作業に自社が年間いくら使っているかを数えてみてください。多くの場合、思っていたより大きい数字が出ます。
