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労務

介護施設のシフト作成を自動化する。進め方と勤怠・給与への接続

介護施設のシフト作成は、単なる割り当て表づくりではありません。夜勤明けの次の勤務、資格を持つ職員の配置基準、本人の希望休、特定の組み合わせを避けたい人間関係。条件が絡み合った巨大なパズルで、リーダーが毎月10時間以上かけても完成しない施設が珍しくありません。シフト管理SaaSの設計に携わった立場から先に言うと、導入の成否は技術ではなく条件の言語化で決まります。規模を仮置きした計算とあわせて、その進め方と、シフトの先にある勤怠・給与への接続までを書きます。

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大城滉希

バックオフィス自動化エンジニア

シフト作成が「リーダーの残業でしか成立しない仕事」になっている

シフトを組める人は限られています。全職員の資格・技能・事情を頭に入れている人でないと組めないため、多くの施設でリーダーか主任の専任仕事になっています。

作成は通常業務の合間には進められないため、残業か持ち帰りで作られます。組み上がったあとも、急な欠勤のたびに組み替えが発生します。

属人化の怖さは、時間よりも「その人が抜けたらシフトが組めない」ことです。作成者の異動や退職が、施設運営そのもののリスクになっています。

職員40名の特養なら、作成と組み替えで月12時間

職員40名の特別養護老人ホームを例にします。翌月分のシフトの初版づくりに8時間、確定後の欠勤や交代による組み替えが月4時間かかるとすると、合計で月12時間です。そのほとんどが、リーダーの残業か持ち帰りで賄われています。

シフト自動作成ソフトに条件を登録して自動生成し、人は微調整だけを行う運用に変えたとします。条件が育ったあとの水準を、生成結果の微調整に3時間、組み替えに1時間の月4時間と置くと、差し引きで月8時間。年間では8時間×12か月=96時間、時給2,500円換算で96時間×2,500円=24万円分の労働時間が浮く計算です。

ただし、導入した月からこの水準にはなりません。最初の1〜2か月は条件を追加しながら手直しが多めに出る期間で、月を追って減っていく前提で計画します。

時間よりも大きいのは、シフトの組み方がリーダー個人の頭の中から、条件の一覧という施設の資産に移ることです。作成者が変わってもシフトが組める状態になります。

数字はすべて御社の値に置き換えて構いません。式は「初版づくりの時間+組み替えの時間」の2つだけです。いまの作成にかかっている時間を1か月だけ記録すれば左辺が埋まり、導入後にどこまで下げたいかの目標値もこの式の上で立てられます。

自動作成の中身は「条件の言語化」で、ここに導入の成否が集中する

シフト自動作成の導入で、技術が問題になることはほとんどありません。成否を分けるのは、いままで作成者の頭の中にあった条件を、システムに登録できる形に言語化できるかです。

条件には2種類あります。破ってはいけない制約(夜勤明けの連続勤務、資格者の配置、労働時間の上限)と、できれば守りたい希望(希望休、夜勤回数の公平、相性)。この2つを区別せずに全部「必須」で登録すると、解が存在しなくなり「自動なのに組めない」という不満になります。

導入の最初の1〜2か月は、自動生成の結果を見て「なぜこの並びは駄目なのか」を作成者に言葉にしてもらい、条件を追加していく期間です。この期間を計画に入れていない導入は、「使えない」という結論で止まりがちです。

言語化には副産物があります。書き出した制約の一覧は、そのまま新任リーダーへの引き継ぎ資料になり、労働時間のルールを守れているかの点検表にもなります。自動化に進まなかったとしても、この一覧を作る作業自体に価値があります。

業界専用のシフトSaaSで足りる範囲は広く、シフト生成そのものを個別開発する理由はまずありません。配置基準や夜勤ルールが作り込まれた既製品を使うのが早道です。

シフトSaaSを入れたあとに残る、勤怠・給与への接続

シフトが自動で組めるようになっても、データの旅はそこで終わりません。予定(シフト)は勤怠システムに渡って実績と突き合わされ、実績は給与計算に渡って夜勤手当や時間外の計算に使われます。

ここが、シフトSaaSを入れただけでは埋まらない隙間です。シフトSaaSと勤怠SaaSの職員コードや勤務区分の対応、夜勤をまたぐ日付の扱い、シフト変更が勤怠側に反映されない問題。月に一度、誰かがCSVを開いて直しているなら、その部分は自動化の対象です。

とくにズレやすいのは、月の途中で確定後のシフトが変わったときです。交代や急な欠勤で予定が変わったのに勤怠側の予定が古いままだと、締めのときに実績との差分が大量に出て、原因の調査に時間を取られます。変更のたびに差分だけを勤怠側へ反映する仕組みにしておくと、締め日の突合が軽くなります。

当方はこのデータの流れを設計する側にいたので、どの接続点で何がズレやすいかを前提に組めます。シフト→勤怠→給与の3システムが繋がると、夜勤手当の計算根拠が予定と実績の両方から追える状態になり、給与の問い合わせ対応も短くなります。

まず制約の一覧化から。システムはその次

順序は、①現状のシフト作成にかかっている時間と、破ってはいけない制約の一覧化、②シフトSaaSの試用(条件を育てる1〜2か月を含む)、③勤怠・給与への接続の自動化、です。①はシステムを何も入れなくても着手でき、②の準備がそのまま整います。

費用の考え方は2段です。②はSaaSの利用料で、開発費はかかりません。③の接続部分は、対応表の整備とCSV変換の自動化であれば、当方の費用帯では「ひとつの作業を自動化する」10万円〜50万円の範囲に収まり、30万円台から組める規模です。

回収は作成者の時間だけで測らないでください。想定例の削減幅(月8時間)を人件費換算すると年間24万円程度ですが、実際の価値は、シフト作成がリーダー個人の技能から施設の仕組みに移ることにあります。作成者が変わってもシフトが組める状態は、金額に直せない保険です。

検討の前に、いまのシフト表を1枚用意して「この並びになっている理由」を余白に書き出してみてください。書き出せた条件の数が、そのままシステムに登録する条件の数です。10個も書けば、自動化できるかどうかの感触がつかめます。

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いまの手順と、その作業にかかっている時間を伺えれば、自動化できるかどうかと、おおよその金額をその場でお伝えします。 資料を整えていただく必要はありません。

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この記事を書いた人

大城滉希

バックオフィス自動化エンジニア

経理・労務のバックオフィス業務を自動化するエンジニア。決済システムの運用現場で16名チームの定型業務を自動化。その後、勤怠・給与計算SaaSと記帳・確定申告支援SaaSを要件定義から運用まで担当。

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