経理
基幹システムから会計ソフトへの仕訳転記を自動化する。方式の選び方と費用
販売管理システムには売上が入っているのに、会計ソフトには入っていない。だから月初に、基幹システムから出したExcelを見ながら会計ソフトへ仕訳を打ち直す。この転記作業は、システムを2つ以上使っている会社ならほぼ必ず発生していて、しかも「入力したら目視で突き合わせて確認する」という二度手間がセットになっています。月200件という仮置きで転記と照合の時間を数字にしたうえで、API・CSV・RPAの3方式を壊れにくい順に並べ、科目マッピングの設計と費用まで書きます。
バックオフィス自動化エンジニア
転記は「同じ数字をもう一度打つ」だけの仕事なのに、毎月人が張り付く
基幹システムと会計ソフトが繋がっていない会社では、月次のたびに同じ流れが繰り返されます。基幹から売上・費用のデータを出力し、Excelで科目ごとに集計し、会計ソフトに仕訳として入力し、最後に入力結果と元データを目視で突き合わせる。
数字は既に確定しています。判断する要素はなく、正しく写すことだけが仕事です。
突き合わせで1件でもズレが見つかると、どこで写し間違えたかを探す時間が上乗せされます。転記の時間より、この照合と修正のほうが長いという声もよく聞きます。
さらに、この転記は「どの数字をどの科目に振るか」を経験者の頭の中のルールでやっていることが多く、担当者が休むと月次が止まります。作業の自動化は、このルールを目に見える形に書き出す作業でもあります。
月200件の転記に、入力と照合で月7時間
販売管理システムと会計ソフトが繋がっておらず、月200件の仕訳を手で入れているとします。1件の入力に90秒とすると、200件で300分、5時間です。
入力が終わったら、元データとの目視の突き合わせが待っています。1件30秒で見ても200件で100分。ズレが見つかった月は原因探しが上乗せされるので、照合はならして月2時間と置きます。入力と合わせて月7時間、決算月はこの倍です。年間ではおよそ90時間になります。
自動化するとどうなるか。データの変換と登録は機械が行い、人に残るのは取込前に件数と合計金額を確認する一手だけ。月7時間が10分ほどになる計算です。照合の時間まで消えるのは、人が写すという工程自体がなくなり、写し間違いを探す理由がなくなるからです。
自社でやるなら: 先に検討すべき方式があり、RPAは最後の選択肢
転記の自動化というとRPA(画面操作の自動化)が知られていますが、これから作るなら先に検討すべき方式が2つあります。壊れにくい順に並べます。
1つ目は、会計ソフトのAPIに仕訳を直接登録する方式です。freeeやマネーフォワード クラウド会計はAPIで仕訳を受け取れます。基幹のデータを読み、科目を変換し、APIで登録する。画面を一切操作しないため、会計ソフトの画面が変わっても動き続けます。freee・マネーフォワードへの仕訳登録は当方が普段から作っている構成で、これを基本にしています。
2つ目は、会計ソフトの取込形式に合わせた仕訳CSVを自動生成する方式です。仕訳のインポート機能を持つ会計ソフトなら、人の操作は「できたファイルを取り込む」の一手だけになります。APIが使えない会計ソフトでも成立し、取り込んだ内容が画面で確認できるため、経理側の安心感も保てます。
3つ目が画面操作の自動化(RPA)です。APIもインポート機能も使えない場合の手段で、動きはしますが、画面の変更で止まるため保守費を見込む必要があります。会計ソフト側に取込口があるなら、選ぶ理由はあまりありません。
金額を左右するのは、転記の件数より科目マッピングと例外
見積りの場では「月に何件ですか」とよく聞かれますが、件数は金額にあまり効きません。1件でも1万件でも、プログラムの処理は同じだからです。
効くのは変換の規則です。基幹の商品分類やコードを、会計の勘定科目・補助科目・部門・税区分にどう対応させるか。この対応表が素直に作れる会社は安く済み、「この得意先だけ科目が違う」「この金額以下は雑費にまとめる」といった例外が多い会社は高くなります。
対応表はプログラムに埋め込まず、経理担当が編集できる設定表(スプレッドシートや管理画面)に持たせるのが定石です。科目の追加や部門の改編のたびに開発者を呼ばずに済み、保守費が下がります。
もう1つ、自動化しても残すべき工程があります。登録前の合計金額の照合です。基幹側の合計と、これから会計に入れる仕訳の合計が一致することを人が確認してから流す。この一手を残すだけで、変換規則の誤りが会計に入り込む事故をほぼ防げます。
件数の多い売上仕訳から、1種類ずつ
全部の仕訳を一度に自動化する必要はありません。仕訳の種類ごとに件数と時間を数え、最も件数が多い1種類(多くの会社では売上仕訳)から始めます。
順序は3つです。まず、基幹からどんな形式でデータを出せるかを確認する(CSV出力があれば十分です)。次に、会計ソフトにAPIかインポート機能があるかを確認する。最後に、科目の対応表を経理側で下書きしてみる。この3つが揃った状態で相談すると、見積りが一度で決まります。
費用の目安は、1種類の仕訳の変換と取込ファイル生成なら30万円台からです。科目マッピングの例外が多い場合や、複数の基幹システムが絡む場合は50万円を超えていきます。想定例のように年間およそ90時間を転記と照合に使っているなら、時給2,500円換算で年間22万円強。おおむね2年以内に回収できる計算になります。
切り替えの月は、手入力と自動生成を並走させてください。同じ月のデータを両方で作り、合計と科目別の内訳が一致することを確かめてから、翌月に自動側へ切り替える。この1か月の二度手間が、変換規則の漏れを本番前に洗い出します。
相談の前に確認してほしいのは1点だけです。基幹システムに「CSV出力」や「Excel出力」のボタンがあるか。それがあれば、この記事の自動化はほぼ確実に作れます。無い場合でも帳票のPDFや画面から取る方法はありますが、費用の前提が変わります。
