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経理

請求書の手入力をAI-OCRでなくす。三重入力を確認1回に集約する仕組みの作り方

取引先から届いた請求書を、支払管理のExcelに転記し、会計ソフトに仕訳として入力し、振込の依頼を作る。同じ紙を見ながら3回入力している。従業員数十〜数百名で経理が1〜3名という会社に、この状態はよくあります。月120枚が届く会社を想定して、AI-OCRを入れると作業がどれだけ残るかを先に計算し、そのうえで、SaaSで足りる範囲と個別開発の出番を分けて書きます。

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大城滉希

バックオフィス自動化エンジニア

請求書の処理が三重の入力になっている

月末から月初にかけて、届いた請求書を開いては、支払一覧のExcelへ、会計ソフトへ、振込依頼へと同じ内容を入力し直す。入力そのものは難しくありません。ただ量があり、締めの数日に集中します。

怖いのは手間より間違いです。金額の打ち間違いは支払の過不足に、入力漏れは支払遅延になります。だからWチェックを入れる。すると人手がさらにかかる。量とチェックが両方積み上がるのが、この業務の特徴です。

しかもこれは、経理の経験がなくてもできる作業です。それなのに締め前の数日は、経験のある担当者が入力とチェックに張り付き、資金繰りの確認や問い合わせ対応といった本来の仕事が止まります。

月120枚の請求書が届く会社の場合

数字は説明のために置いた値です。月120枚の請求書が届き、1枚につきExcel転記・会計ソフト入力・振込依頼の作成で計10分かかるとします。120枚 × 10分 = 1,200分で、月20時間。別の担当が全枚をWチェックするなら、1枚2分 × 120枚 = 240分で、さらに4時間。合わせて月24時間が入力とチェックに使われています。

AI-OCRで受領からデータ化までを自動にし、会計ソフトと振込データへは連携で流す設計にすると、人の作業は「読み取り結果の確認」に集約されます。確認が1枚30秒なら 120枚 × 30秒 = 60分。読取率を9割と見込むと読み間違いが月12枚、修正が1枚3分なら 12枚 × 3分 = 36分。残る作業は月1時間半ほどです。

24時間と1時間半の差そのものより大事なのは、作業の性質が変わることです。転記は「全枚を正確に打つ」仕事ですが、確認は「機械の結果を見て例外だけ直す」仕事です。締め前に経験者が張り付く必要がなくなります。

御社の数字で置き直してください。月の枚数、1枚あたりの入力時間、Wチェックの有無。この3つを掛けるだけで、いまの作業量と自動化後の残りが同じ式で計算できます。

作る側の視点。データの流れと、確認をどこに集めるか

自社でやる場合、まず現状の流れを矢印で書き出します。受領(メール添付のPDF、郵送の紙)→ データ化(取引先・金額・支払期日・振込先)→ 仕訳(勘定科目・部門)→ 会計ソフトへ登録 → 振込データ作成 → ネットバンキングで振込。このうちどの矢印が手作業かを数えるのが最初の一歩で、AI-OCRを載せる場所は「受領→データ化」です。

あわせて、紙で届く割合も数えておきます。紙が中心なら「誰がいつスキャンするか」という運用がひとつ増えます。電子帳簿保存法の保存要件への対応も、この段階で確認しておくと二度手間になりません。

請求書受領SaaSの標準機能で足りるのは、一般的なフォーマットの読み取り、過去の処理から学習した仕訳の候補表示、主要なクラウド会計への連携、振込ファイルの作成、電子帳簿保存法に沿った保存です。会計がfreeeやマネーフォワードなら、契約と設定だけで前節の計算に近い形まで行けます。

足りなくなるのは、会計ソフトが連携先リストにない場合、支払管理のExcel台帳や発注データとの突合を続ける必要がある場合、明細行を店舗や部門に按分する自社ルールがある場合です。この隙間が個別開発の出番で、SaaSのAPIやCSVから取込形式へ変換する、台帳と自動で突き合わせる、といった小さな仕組みで埋まります。

当方はAI-OCRを使った記帳・確定申告支援SaaSの開発を担当してきました。その経験から言うと、設計の要は読み取り精度そのものより「読み取り結果を人がどこで確認するか」です。精度を100%と見込んだ設計は必ず破綻します。確認の工程を1か所だけ残し、そこに例外を集める形にします。

もう1つの運用面のつまずきは、受領の入り口です。取引先ごとにメール・郵送・Webダウンロードとバラバラに届く状態のままだと、SaaSへ集める作業が新しい手作業になります。専用の受領アドレスに寄せるといった取引先への案内までが、導入作業のうちです。

実物の請求書をトライアルに読ませてから決める

順序は3段階です。第一に、月の請求書の枚数と様式の種類を数える。手書きや独自様式の割合が高いと、OCRの効果が下がります。第二に、SaaSの無料トライアルに自社の実物の請求書を読ませて、精度を自分の目で確かめる。デモ用のきれいな請求書では判断できません。第三に、自社の会計ソフトが連携先にあるかを確認し、なければその隙間だけを個別開発の対象にする。

トライアルで見るのは、読取率の数字よりも「読み間違えたときに直す手間」です。月120枚で読取率が9割なら、毎月12枚ぶんの確認と修正が定常業務として残ります。その手間を含めて、手入力と比べてください。

費用は二層で考えます。SaaSの利用料は各社の公表プランによります。個別開発の部分は、取込ファイルの変換のような1本の処理なら当方の目安で10万円〜50万円の帯に収まり、Excel台帳や発注データとの突合まで含めるなら30万円台からが目安です。会計ソフトが連携先にあるかどうかで開発の要否そのものが変わるため、見積りの前に確認しておくと話が早く進みます。

回収は時間で計算してください。前節のシナリオなら月24時間が1時間半になり、差は月22時間半。時給3,000円換算で年81万円です(22.5時間 × 3,000円 × 12か月)。月次の締めが早まる効果は、この計算の外側に付いてきます。

「AI-OCRを入れたい」から入ると、読み取りの精度比較で止まりがちです。先に自社の流れを矢印で書き、手作業の矢印がいくつ消えるかで判断してください。

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いまの手順と、その作業にかかっている時間を伺えれば、自動化できるかどうかと、おおよその金額をその場でお伝えします。 資料を整えていただく必要はありません。

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この記事を書いた人

大城滉希

バックオフィス自動化エンジニア

経理・労務のバックオフィス業務を自動化するエンジニア。決済システムの運用現場で16名チームの定型業務を自動化。その後、勤怠・給与計算SaaSと記帳・確定申告支援SaaSを要件定義から運用まで担当。

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